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華のしずく~あなた色に染められて~

第28章 【剣(KEN)~華のしずく~】 運命の邂逅

 主がその刀を通りすがりの見も知らぬ浪人から買い取ったのは、もう一年近くも前のこと。
―あの刀は使う者、持ち主を自ら選ぶと云われておる刀じゃ。わしの友人は、あの刀を持っていたがために、さる藩のお家騒動に巻き込まれて生命を落とした。わしは亡くなりし友人の形見として譲り受けたのだが、そんないわくのある刀なぞ一刻(いっとき)たりとも持っていとうない。
 そう言って、ただも同然の値で刀を売り払い、厄介払いしたと言い、清々とした顔で去っていったのだ。

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