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華のしずく~あなた色に染められて~

第28章 【剣(KEN)~華のしずく~】 運命の邂逅

 と、ふいに脇から細い嗄れた声が追いかけてきて、青年は振り向いた。
「そこの若者よ」
 じっと耳を澄まさねば、聞き逃してしまいそうなほどに低い、まるで囁くような声だ。
 青年は声の聞こえてくる方を見た。町角にひっそりと蹲るのは、辻占の老婆であった。粗末な筵(むしろ)を敷いて、その上にちんまりと座っている姿は、何かの置物かのようだ。

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