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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

「何を案ずるというのだ?」
 信成が穏やかな微笑を浮かべている。珠々を妻としてからというもの、それまで癇性だった信成が随分と穏やかになったと家臣たちは胸なで下ろしていた。それは恐らく、珠々という心安らぐ存在を得たからに相違なく、家臣たちは年若い主のためにも歓んでいたのである。
「何故か、しきりに胸騒ぎがしてならぬのでございます」
「胸騒ぎとな」
「はい」

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