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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

「まさか、そのようなことがあるはずもございませぬ」
 月の姫は彼女を引き止める老夫婦や求婚者たちを振り切って、月世界へと還ってゆくのだ。いにしえの伝説の美姫を自分になぞらえて話す信成は、どうやら本気で珠々をかぐや姫の再来だと思い込んでいるようであった。
「それよりも、殿。私の方こそ心配でございます」
 珠々は信成の腕の中で良人の顔を見上げた。

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