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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

 今、その危うさは殆ど無くなり、これまでせめぎ合っていた二つのものがごく自然に彼の中で混じり合おうとしている。愛する者のために泰平の世を築き上げたい、即ちそれが愛する者、大切な者を守ることにもつなかせるのだと彼は無意識の中に悟ったのだ。
「お願い、私を一人にしないで」
 珠々の美しい双眸から大粒の涙が溢れ、流れた。月の光を受け、珠々の涙は冴え冴えと輝いていた。その花の雫にも似た澄んだ涙を、信成はこの上なく美しいと思った。

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