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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

 信成は何も言わなかった。ただ黙って、珠々の顔をそっと両手で包み込んだ。漆黒の夜を集めたような信成の眼は穏やかな光を宿していた。確かに、珠々という存在を得てから、信成は変わった。彼は、彼本来の優しさと戦国武将として敢えて冷酷であろうとする二つの感情の間で激しく揺れていた。両者の間で懸命に均衡を保とうとすればするほど、彼は不安定になっていった。

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