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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

 聞き覚えのある声は、人を揶揄するような響きがある。信成が珠々をよくからかうときの口調だ。聞き慣れたその物言いに、珠々の眼が熱くなった。
「殿!!」
 珠々は走り出していた。
 次の瞬間、珠々は信成の懐に飛び込み、すっぽりと包まれていた。
「殿、ご無事で、よくぞご無事でお帰りになられました」
 珠々は大粒の涙を流しながら、信成の逞しい胸に頬を押し当てた。

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