テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

 生命からがら帰城した時、信成は着の身着のままであった。きらびやかな鎧姿で出陣したときとは別人のごとく薄汚れ、軽い斬り傷や擦り傷があまたあった。
それでも生命がけて主君を守り抜いた近習たちの力で、生命に関わるような怪我はどこにもなかった。まだ二十四歳という若さもあり、少し養生すれば直に健康を取り戻すであろうという薬師の見立てであった。
 今回の戦では大敗を喫した信成にとって、これはまた生まれて初めての負け戦でもあった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ