華のしずく~あなた色に染められて~
第3章 【華のしずく】~夏雷~
信成の言うとおり、掛け軸の石榴は今にも手を伸ばせば届きそうなほどに、みずみすしく、あたかも本物のようにさえ見える。京からはるばる嫁いできた女性は、美しいだけでなく才知溢れる貴婦人であったのだろう。
珠々が逢ったこともない、その女性に想いを馳せていると、信成が唐突に言った。
「此度の戦では兵の大半を失い、残った者も傷を負った者が多い。そのような者たちにもこのような温泉は効くのであろうな」
珠々は、信成の言葉を聞くともなく聞いている中に、はたと思い当たるものがあった。
珠々が逢ったこともない、その女性に想いを馳せていると、信成が唐突に言った。
「此度の戦では兵の大半を失い、残った者も傷を負った者が多い。そのような者たちにもこのような温泉は効くのであろうな」
珠々は、信成の言葉を聞くともなく聞いている中に、はたと思い当たるものがあった。