華のしずく~あなた色に染められて~
第3章 【華のしずく】~夏雷~
やっと物心ついた頃、珠々は夏場に雷が鳴ると、父の懐に潜り込んだものだ。父は笑いながら、幼い珠々を抱きしめていてくれた。父の腕の中にいる限り、雷様も落ちてはこないのだと珠々は本気で信じていた。
雷鳴と共に雨滴も落ち始めた。屋根がついているとはいえ、いかにも簡素な屋根である。激しい降りになっては、すぐに濡れてしまうに相違なかった。
「殿、雨が降って参りましたゆえ」
暗に出ようと言ったのだが、信成は笑いを浮かべたまま、出ようとしない。
雷鳴と共に雨滴も落ち始めた。屋根がついているとはいえ、いかにも簡素な屋根である。激しい降りになっては、すぐに濡れてしまうに相違なかった。
「殿、雨が降って参りましたゆえ」
暗に出ようと言ったのだが、信成は笑いを浮かべたまま、出ようとしない。