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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

 その時、再び、雷鳴が轟いた。気のせいかもしれないけれど、雷の音は次第に近づきつつあるようであった。雨も激しくなり、簡素な屋根の四方の隙間から雨粒が時折落ちてくる。躰は温泉に浸かったままなので、さほどに冷たさや寒さはまだ感じることはない。が、珠々は一刻も早くここから出たかった。
 空は依然として、ゴロゴロと耳障りで嫌な音を立てている。珠々はたまらず、両手で耳を覆って面を伏せた。
「いかがした?」
 信成が珠々を腕に抱いた。

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