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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

「羽柴からの使者とな」
 その声には、先刻以上の緊張が孕まれていた。対する貞親も心なしか、蒼ざめて見えるのは、月光の当たり具合のせいであろうか。
 そんなことを考えていた珠々とふと貞親の視線が合い、貞親は自身の不安を読みとられでもするまいとするかのように、咄嗟に面を伏せた。この忠実無比な壮年の家老も、青龍の国からの使者の突然の来訪に、少なからぬ懸念を抱いていることが窺い知れる。

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