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華のしずく~あなた色に染められて~

第4章 【華のしずく】~試練~

 この絵は先先代の夫人が描いたものだと、良人の信成が珠々に教えてくれた。京の都からはるばる入輿してきた夫人は臈長けた美貌のみでなく、また才知にも溢れた才色兼備の女性であったと聞く。信成の妻となって十ヶ月が経つが、珠々にはいまだに懐妊の兆がない。
 珠々に仕える侍女頭の楓は、珠々がまだまだ十代の若さであれば、案ずることはないと言うけれど、武門の家にとって後継ぎは必要である。珠々にしてみれば、良人のためにも一日も早く、信成の子を生みたかった。

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