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華のしずく~あなた色に染められて~

第4章 【華のしずく】~試練~

「嫌じゃ、私はゆかぬ。殿、どうかお側に!」
 珠々が悲痛な声で叫ぶ。だが、信成は何も言わない。ただ穏やかに微笑んでいるのみである。
 秀吉から遣わされた若き兵は丁重な態度で信成に会釈した。
「仰せのとおり、ご内室様のおん身は当方にて責任もってお預かりさせて頂きまする」
「妻のこと、くれぐれもお願い申す」
 信成も使者に小さく頭を下げた。
 敵兵がいつまでも動こうとせぬ珠々の腕を取った。

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