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華のしずく~あなた色に染められて~

第4章 【華のしずく】~試練~

 珠々は天守のあった方角を見た。あの炎の中で、信成は生命を絶ったに違いなかった。白小袖に身を包み、端座して最期の瞬間を迎えようとする信成の姿が珠々にはあたかも見えるような気がしてならなかった。
 信成が切腹して果てた後、家老の貞親が介錯、自ら城に火を放ったに相違ない。貞親にしてみれば、主の首が敵方に渡り、さらし物になるのは耐えられないだろう。すべてを始末した後、貞親もまた信成の後を追うことは明らかであった。

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