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華のしずく~あなた色に染められて~

第5章 【華のしずく】~永久(とこしえ)~

 珠々は打ち掛けの裾をさばいて端座している。敗軍の将の妻として、捕虜となっても、いささかも卑屈になることなく、さりとて敵の総大将の前に出て媚びることもない、その堂々とした態度に秀吉は打たれたようであった。その姿は、凛とした一輪の花を彷彿させる。
「―美しいな。聞きしに勝る佳人じゃ」
 しばし珠々の美貌に見とれていた秀吉がやや掠れた声で言った。

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