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華のしずく~あなた色に染められて~

第5章 【華のしずく】~永久(とこしえ)~

 ひとしきり眺めた後、珠々は静かに刃を鞘から抜いた。近侍していた小姓が顔色を変え立ち上がった。大きな刀は、小柄な珠々には扱いに困るほどだが、珠々は刀を右手に持つと、すっと秀吉の方に切っ先を向けて繰り出した。
 色を失った小姓が慌てて、珠々を取り押さえようと、その傍に駆け寄ろうとする。が、秀吉は興味深げな顔でそれを手で制した。己れに真っ直ぐに向けられた刀が室内のろうそくの光を受けて燦然ときらめくのにも顔色一つ変えず、秀吉は笑った。

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