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華のしずく~あなた色に染められて~

第1章 【華のしずく】~出逢い~

 楓は先刻の出来事で相当に腹を立てているらしく、珠々には物も言わず去っていった。珠々は一体、自分はここで何をすれば良いのか、いつまでここにいれば良いのか判らず、途方に暮れた。なすこともなく、ただ刻だけが無為に過ぎゆき、幾度めになるか知れぬ吐息を洩らした時、若い侍女が夕餉の膳を運んできた。見れば、障子越しに差し込む光ははや黄昏の色を帯びていた。

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