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華のしずく~あなた色に染められて~

第6章  雪の華~華のしずく~

     一

「姫さま」
 輿の外側から控えめに声をかけられ、徳姫(あやひめ)は唇をいっそう強く噛みしめた。
―とうとう来たのだわ。
 そんな想いがちらりと胸を掠める。思いつめた眼差しがより切迫した光を帯び、誰が見ても明らかにそれと判る悲壮感が姫の全身を包んでいた。

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