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華のしずく~あなた色に染められて~

第6章  雪の華~華のしずく~

 それまでずっと揺れ続けていた輿の動きがふいにピタリと止んだ。徳姫の両膝の上できっちりと組まれた両手のひらがわずかに慄えた。
 ほどなく輿の引き戸がゆるゆると開けられる。
「只今、到着致しましてございます」
 乳人(ちのひと)の柏木がいつもよりやや感情を押さえた低めの声で囁くように告げた。

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