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華のしずく~あなた色に染められて~

第7章 【雪の華~華のしずく~】二

 歌うような調子で呟く徳姫の背を柏木は切なく見つめた。朱雀の国へ嫁いできて、まだほんのひと月しか経たないが、徳姫はひと回り以上、痩せたようだ。
 毎日、一日中部屋に閉じ込もって茫と刻を過ごすか、こんな風に寒い日にも拘わらず障子を開け放して庭を見つめているかのどちらかだ。口に出すのもはばかられるが、その姿はまるで現(うつつ)の人のようには見えず、柏木ですら時折、姫が狂人と化してしまったのではと不安に陥ることがある。

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