テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第7章 【雪の華~華のしずく~】二

 敵国にあって、たった一人雄々しくも耐えようとしているそのいじらしい姿は、庭にひっそりと佇む雪に包まれた紅梅にも似ていた。
 長く厳しい冬をひたすらじっと耐え忍んで、春を待っている。いつか太陽に愛され、そのやわらかな陽差しに抱(いだ)かれる日を夢みているのだ。しかし、徳姫に本当に春は訪れるのであろうか。我が乳を与えて大切に育ててきた姫の未来に、柏木は不安を憶えずにはおれないのだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ