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華のしずく~あなた色に染められて~

第7章 【雪の華~華のしずく~】二

「いえ、そのようなお方がいらっしゃるとは、私はお聞きしたことはございませぬが」
 柏木が控えめに応えると、徳姫は涙をそっと拭いながらも、うっすらと頬を染めていた。
「そのようなことを勘繰るなど、私ったら、どうかしている、はしたない真似を―」
 柏木が知る限り、徳姫は良くも悪くも従順な、いかにも深窓の生まれ育ちの姫君であった。家臣の娘として生まれはしたが、主君の姪ということで一目置かれ、物心つくかつかぬ頃より、将来の政略結婚のための美しき道具となるために大切にかしずかれて育った。

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