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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

     三

 それから数日後。徳姫は二ノ丸へと続く廊下を急いでいた。
 その腕には余るほどの大ぶりな梅のひと枝が大切そうに抱えられている。この紅梅は言わずと知れた徳姫の部屋の前の庭に咲いているものであった。今朝早くに、徳姫は柏木に手伝わせて、自ら紅梅の樹のひと枝を伐った。
 というのも、昨日の夕刻、二ノ丸から遣いの若い侍女がよこされ、貞心院よりの言伝(ことづて)を聞いたからだ。

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