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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

 侍女の口上によれば、貞心院は奥庭の樹々をたいそう愛でていたという。殊に柘榴と並んで紅梅を大切にしていたゆえ、今、盛りの時分であろうから是非、ひと枝分けて欲しいというものであった。
 折角、生命の限り精一杯開いている花を途中でむざと手折るのは、いかにも気が進まない徳姫ではあったけれど、他ならぬ信晴の母にして、姑にも当たるひとの申し出である。

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