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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

 信晴とは形だけの夫婦でしかない。これほど拒絶され冷淡な仕打ちを受けても、飾りだけの妻でありながらも、哀しいことに、徳姫はこの暗い光を宿した眼を持つ男に強く魅かれていた。
「フン、こんなもの」
 ふいに信晴が徳姫の手から梅を奪った。信晴は奪い取った梅の枝を力任せに真っ二つに折り、無造作に下へ放り投げた。それは、まるで汚物でも棄てるかのような仕草であった。

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