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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

「酷(ひど)い」
 徳姫は唇を噛んで、無残な姿に変わり果てた梅を茫然と見つめた。大ぶりの枝には紅色(べにいろ)の可憐な花がたくさんついていたのに、今、それらは小さな花びらを散り零し、床に死んだように横たわっている。心なしか、勢いのあった枝も力なくしおれているように見えた。
 紅色が滲んで、ぼやける。徳姫は涙をこらえて、信晴に向き直った。
「子どもじみたお振る舞いはなさいますな」

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