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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

 が、信晴は口の端を引き上げた。
「そちは知らんのか。わしの母は十九年前、確かに青龍の国に連れてゆかれたのだ。わしの父がそなたの父との戦に敗れ、母は捕虜として敵国へと連行された。母は二カ月余り、そなたの父の許に囚われの身となっていた。その折、母がそなたの父の寵愛を受けたという専らの噂よ」
「―いいえ、そのようなこと、あるはずもございませぬ!」
 それでも言い張る徳姫に、信晴は吐き捨てるように断じた。

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