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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

「お義母(はは)上さま」
 徳姫は涙に濡れた瞳で貞心院を見上げた。今年、三十五になる貞心院は紫の頭巾を被り、同じ色の衣(ころも)を身にまとっている御後室姿である。その地味な尼姿がかえって彼女の臈長けた美貌を際立たせていて、まさに眩しいばかりの美しさであった。ふと先刻の信晴の台詞が耳奥に蘇った。
―そちの父は、身重の母を無理に犯したのじゃ。
 しかし、秀吉がそのような卑劣なふるまいをするとは、やはり信じがたい。

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