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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

 徳姫の視線に気づいたのか、貞心院は微笑んだ。まるで大輪の花のような、あでやかさである。確かに、この小座敷は本丸の徳姫の居室―徳姫が入輿するまで貞心院が暮らしていたという―に似ていた。床の間の傍に小さな違い棚があるのも、床の間に掛け軸がかけられているのも、そっくり同じだ。
 もっとも、今、この部屋の床の間には柘榴の絵が描かれたものが掛けられているが。

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