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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

「ほら、ここを開けると、庭が見渡せるのまで同じ」
 貞心院が立ち上がり、障子をパッと開け放つと、縁からは小さな庭が見えた。ただ違っているのは、縁を降りたすぐの場所の沓脱ぎ石(くつぬぎいし)の傍に小さなつくばいが置かれていることだった。苔むした石のつくばいの中には一輪の椿が無造作に水に活け込まれている。花は樹についているかのように、生き生きとみずみずしかった。

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