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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

 先刻の信晴の行為には愛情どころか思いやりのかけらもなかった。ただ暴力的に力でもって徳姫を組み敷こうとしたにすぎない。
 信晴は、それほどまでに自分を憎んでいるのだろうか、自分はそこまで疎まれ嫌われているのだろうか。そう思うと、また、新たな涙が湧いてきた。涙を溜めた眼で貞心院を見つめると、貞心院は困ったように微笑んだ。
「あらあら、ごめんなさいね。かえって、また、辛いことを思い出させてしもうたようですね」

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