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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

 その時、徳姫の中を再び、信晴の台詞がよぎった。
―そなたの父がわしの母を犯したのじゃ。
 これほどの見事な打ち掛けを贈るからには、秀吉が貞心院に好意以上の感情を抱いていたことは否定できない。では、真に二人の間には、信晴の言うように男女の拘わりがあったのだろうか。徳姫の疑念は急速に膨らんでゆく。
「真のことなのでしょうか」
 唐突に呟いた徳姫を、今度は貞心院が怪訝そうに見返した。

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