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華のしずく~あなた色に染められて~

第9章 【蜩(ひぐらし)~華のしずく~】

「お方さま、このお品はお館さまがお方さまにお贈りになったおん大切なお品ではございませぬか」
 楓が顔色を変える。
「お方さま?」
 おふうは今度こそ、心ノ臓が止まるかと思うほど、驚いた。この美しい方こそ、朱雀の城の城主の夫人、珠子の方であったのだ。そう言えば、珠子の方は猟師の娘であり、信成に見初められたのだと聞いている。それゆえ、信成の妻となるまで、おふうと同じように働いていたのだと、漸く幼いおふうにも合点がいった。

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