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華のしずく~あなた色に染められて~

第10章 【紫陽花~華のしずく~】一

 では何故、その将軍家の息女がこのような遠国へと入輿してきたかといえば、これには深い理由がある。当時の足利幕府第十五代将軍足利義道は既に名目だけのものであった。時は下克上の戦国乱世、これまでの価値観など取るに足らぬものとなり果て、力ある者が弱き者に成り代わる時代である。たとえ家臣といえども、国を治める能力がなければ、主を討ち己れが上に立つ、それが今の世であった。

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