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華のしずく~あなた色に染められて~

第11章 【紫陽花~華のしずく~】二

     二

 降りしきる雨は、まるで女人の吐息を糸にしてより上げたように繊細なものであった。庭から見る紫陽花の色もかなり深まってきた。雨に濡れる深い青色は、どこか秀吉の瞳を思い起こさせる。
 初めて寝所に召された夜、結局、明子の身には何も変化はなかった。そのことに胸なで下ろす自分と、一方で物足りなく感じる明子がいる。その事実に明子自身、戸惑っていた。

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