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華のしずく~あなた色に染められて~

第12章 【残菊~華のしずく~】序章

「藍丸様?」
 五喜が小首を傾げて前方を見つめる。だが、二つに割れた茂みの中から姿を現したのは、見たこともない大人の男のひとだった。三十歳くらいだろうか、子どもの五喜からは見上げても足りないくらいの長身である。降り注ぐ秋の陽の加減で顔立ちはよくは判らなかったけれど、男ぶりは悪くはなさそうだ。
「ホウ、こんなところで可愛らしい姫に出逢うたものだ」
 その人は優しそうな笑みを浮かべて五喜を見つめた。五喜もその人に微笑みかける。

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