テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第13章 【残菊~華のしずく~】一

     一

 その日、五喜は砂山家の当主時寿の部屋に呼ばれた。初め、五喜は何事かと訝しんだ。
十六になった今でも、侍女や乳母の眼を盗んでは、庭に出て樹登りをして怒られるのは毎度のことである。五喜は幼い頃から闊達な少女だった。親代わりとなっている傅育係の時寿も五喜が男ならば、良き武将となったのではと思わないでもなかったほどである。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ