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華のしずく~あなた色に染められて~

第13章 【残菊~華のしずく~】一

「そんな―」
 五喜は蒼白になって呟いた。悪い夢を見ているように思えた。それでは、時治と自分の約束はどうなるのだろう。五喜は幼い日から時治の妻になることをひたすら夢見てきたというのに。
「五喜殿、気の毒とは思えど、時治とのことはすべてなかったことにして貰いたい。何人たりともお館様のご意思には逆らえぬ。すべて忘れるのが時治の、引いては御身のためぞ」

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