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華のしずく~あなた色に染められて~

第13章 【残菊~華のしずく~】一

「相変わらずのお転婆ぶりだと聞いていたが、見かけは愛らしい姫ではないか」
 だが、何より五喜が驚いたのは、秀吉の声であった。深みのある、優しげな声。
「あなたは―」
 五喜は息を呑んで、秀吉を見つめた。記憶が幼い日々へと巻き戻されてゆく。五年前、砂山家の庭で出逢ったひとは、こんな声をしていなかっただろうか。あの日、時治と隠れ鬼をしていた五喜は庭の茂みの奥へ隠れていたのだ。

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