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華のしずく~あなた色に染められて~

第13章 【残菊~華のしずく~】一

 そこへ現れた男を初め、五喜は時治と間違えてしまったのだ。五喜をふわりと抱き上げて、優しい言葉をくれたひと。
―元気で大きうなるのだぞ。
 今もあの人の印象は強く残っている。
 あの時、逆光で眩しくて、あの人の顔はよくは判らなかったけれど、確かに聞いた声は、これと同じものだった。
「どうやら、思い出したようだな」
 秀吉が笑った。温かな笑顔に、恐怖も溶けてゆくような心持ちになる。秀吉が五喜の髪にそっと手を伸ばした。

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