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華のしずく~あなた色に染められて~

第13章 【残菊~華のしずく~】一

「そなたが大きうなるのを楽しみにしておったぞ」
 その言葉を聞いた刹那、五喜の心に再び忘れかけていた恐怖が蘇った。そうなのだ、自分は秀吉の側妾となるために、ここへ来たのだ。のんびりと昔語りをするために、秀吉は五喜を寝所に呼んだわけではない。これから自分がなすべきことに思い当たり、五喜は身を強ばらせた。
 五喜の髪を撫でる秀吉の手が背中へとすべる。ふいにもう一度顔を上向けられた。

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