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華のしずく~あなた色に染められて~

第14章 【残菊~華のしずく~】二

 互いに言葉も交わさぬままの別離だったのだ。時治にとって、秀吉は絶対であった。二人とも秀吉の命に逆らうことはできない身であった。だが、どうしても忘れることができなかった。五喜の中で、時治の面影は片時も消えることはなかった。裏腹に逢えねば逢えぬほど、恋しさが募り、夜毎に時治を思って泣く日々が続いていた。

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