テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第14章 【残菊~華のしずく~】二

 本来、奥向きは後宮に匹敵し、秀吉以外の男子は足を踏み入れられぬ禁域である。だが、時治は小姓時代から奥向きにも出入りしていた経緯から―元服前の少年は出入りを許されている―今も秀吉の命で時折は奥御殿に来ることもあった。
「お館様のご用で奥へ参ったのですが、まさか五喜殿にお逢いできるとは思うてもみませんでした」
 時治が五喜の髪を撫でながら感に堪えぬ風に言う。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ