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華のしずく~あなた色に染められて~

第14章 【残菊~華のしずく~】二

 五喜が率直な感想を告げると、時治の眼がまた翳りを帯びた。
「まさか、そなたはお館様のことを―」
 時治が五喜を抱きしめたまま呟く。
「あれほどのお方は滅多とおられぬ。そなたがお館様をお慕いするようになったとて、私には何も申せぬが」
 その台詞に、五喜は大きく眼を見開いた。「何を仰せられます。誓って―、誓って、時治様への私の気持ちは変わってはおりませぬ」

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