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華のしずく~あなた色に染められて~

第14章 【残菊~華のしずく~】二

 五喜の切ないほどまでの覚悟をよそに、現実はあくまでも冷酷であった。奥庭で時治と思いがけぬ再会を果たしたその日、五喜は秀吉から再度、夜伽を仰せつかった。
 その夜、寝所に入る前に廊下から見た月は、哀しいまでに冴えていた。晩秋というより、初冬の細い月は蒼ざめた光を地上に投げかけている。冬の凍った月は、五喜の心までを凍えさせた。

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