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華のしずく~あなた色に染められて~

第18章 【花紋~華のしずく~】 一

 広子はどういうわけか、麗子を憎んだ。顔も見たことのない亡き麗子の母に嫉妬し、その代わりに先妻の忘れ形見の麗子に辛く当たった。気が付けば、麗子が醜女で、年頃になっても月のものもない不具(かたわ)だという酷(ひど)い噂が立っていた。
 むろん、噂を流したのは広子であり、そろそろ適齢期になりつつあった麗子を殊更外に出さぬよう邸内に閉じ込めるようにして世間から隔離した結果、その噂は余計に真実らしく人々の間にひろまった。

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