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華のしずく~あなた色に染められて~

第19章 【花紋~華のしずく~】 二

 岩の向こうに見える樹々にも薄く雪が積もっている。温泉の回りにうっそうとした樹々が自生しているので、姿を人に見られる懸念もない。麗子はすべてのものから解き放たれて、存分に湯の中で手足を伸ばしていた。眼を伏せていると、心地よいまどろみにいざなわれそうになり、慌てて眼を開けた。
 その時、湯げむりの作る白い幕の向こう側に人影が見えた。

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