テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第20章 【朱夏~華のしずく~】

「道に迷ってしまって」
 口ごもりながら言うと、男は頷いた。
「されば、どちらまでゆかれますかな? 私めがお送り致しましょう」
「砂山時寿様のお屋敷まで―」
「おお、砂山様と申し上げれば、こちらのお屋形様のご信も厚いといわれるご家臣、そちらのお屋敷にお仕えなさっておられますか」 相手は、どうやら藍丸を砂山家に仕える侍女と勘違いしたらしい。その方が都合がよいので、藍丸は敢えて本当のことを言わなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ