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華のしずく~あなた色に染められて~

第20章 【朱夏~華のしずく~】

「ご親切に、ありがとう存じます」
 藍丸は促されるままに、男について歩き始めた。しばらく歩いたところで、人混みが途切れた。商店や家並みも終わり、通りかかる人も滅多といない町はずれにさしかかったのだ。
 その時、ふいに男が藍丸の腕を掴んだ。
「そろそろ、ここら辺で良いだろう」
「何をなされますか」
 藍丸が愕いて叫ぶと、男の表情が変わった。人懐っこそうな笑みが面をかぶったように凶暴な顔つきになる。

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